第三章 メイドのお仕事

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(もしかして、お姉さん……。あの人が好きなのかしら) 既に枯れた目標を掲げているホリーだって年頃の娘なのだから多少興味がある。もっと仲良くなったら是非聞き出そう、とホリーは野菜を背負って鍋の買い出しに向かった。 鍋を買ったら、一先ず買い出しは終了する。肉類は買って来なくても良いとロルフから言われているからだ。 確かに野菜のストックは少なかったが、肉類は豊富に保管されていた。ロルフとクラウス以外にも、オールとアーニャが食べる分もあるのだろう。 (もしかして、アーニャ様やオール様、それに遊びにいらっしゃる狼さん達が獲ってきてくれるのかしら) それならとても助かるし、預かった生活費はかなり余る事になるだろう。食費が大幅に浮くのだから。ホリーは紙片に買った物と金額を細かく書き込んだ。 ロルフからは何も言われていないが、不明な使用金があったら不安になるだろう。 今ある信頼を絶対に崩さない為にも、お金の管理は行き過ぎなくらい厳しいのが正解。これも、母の教えだ。 (母さん、私も頑張るから……) いつかまた、家族で暮らせるようになると良い。小さな夢を抱えて、ホリーは買い出しの帰りに道端に咲いていたスノードロップを摘んで帰った。 スノードロップは春を待つ花。長い冬の終わりを告げる花。もう直ぐ、土の国には短い春が訪れようとしていた。
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