第四章 訓練生の一日

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「はーい……」 渋々と席に着くと、フェルナンドはにこやかに今日の授業について説明を始めた。 今日の授業は実地訓練。遭難者がいる事を踏まえた雪山及び迷宮での救助訓練を行う。 「鳥部隊とも合流し、総勢二十八名で四人一組のチームを組みます。チームの内訳はこちらで編成しました」 チーム割りの表が配られた。猟犬部隊と鳥部隊半々のチーム構成だ。クラウスは同じチームにカティスがいて安堵した。心強い。だが、鳥部隊の二名の中に……フォルクがいた。 「あー、先生。ウチのチームパワーバランスおかしくないですか? クラウスにフォルクって。ぶっちぎりじゃないですか。僕は楽そうだから嬉しいけど」 クラウスがフォルクを苦手としている事を知っているカティスがさり気なくフォローしてくれた。 「嬉しいなら良いじゃないですか」 「いやぁ、でも……」 「クラウス相手に引けを取らないのがフォルクしかいないのですから、しかたありません。誰と組んでも嫌味にしかなりませんよ、期待の新人など。強い者同士、適当に収まって下さい」 ニコニコしているが、翻訳すると「つまらん文句を言うな、小僧が!」だ。 「分かりました。適当に、収まります」 「クラウス!」 「ありがとう、カティス。でも、大丈夫だ」 「そうそう。クラウスはあらゆる面で私も尊敬するほど素晴らしい。一つの欠点を除けば」 「欠点……」 フェルナンドは人差し指を立ててニッコリ笑った。 「人間関係の、食わず嫌いです。君は初見で物の見方が小さくなる。せっかくの器が、勿体無い。ですので、私もルーク教授も、貴方を絶対に甘やかさないと決めています」 つまり、このチーム編成はルーク教授のテコ入れなのだ。 ついでにフェルナンドはカティスの頭を再度鷲掴みした。 「君は友人思いで優しいけれど、優しさだけでは人は育たない。よく覚えておきなさい」 「うぐ、は、はい……」
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