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ここの先生方には全く頭が上がらない。カティスと二人揃ってションボリしてしまうと、今度は揃って頭を撫で回された。
「よしよし、いい子だ。うーん、猟犬部隊のクラスに来ると、犬がいっぱいいるみたいで何だかとても楽しいなぁ!」
「何ですか、それは……」
「いやぁ、率直な感想だよ。鳥部隊は個性的過ぎて、それはそれで楽しいですけどね。叱っても響かないのが多いからなぁ」
小さくぼやきつつ、フェルナンドはタイムスケジュールを説明してくれた。
これから、昼までは長距離ランニングや高速縄跳びなどの基礎訓練。早めに昼を済ませたら、残りはびっちり実地訓練。
聞けば聞くほど、弁当を忘れてしまったのは痛かった。
(仕方ない、食堂で適当に見繕うか……)
基礎訓練を終えたクラウスは、ため息をつきつつカティスと一緒に食堂に向かおうとした。
『クラウス!』
「アーニャ?」
アーニャが何やら背中に包みを括り付けられてクラウスの元に駆け寄ってきた。
『もう、バカね! わすれものよ!』
「ああ、弁当を届けてくれたのか! ありがとう」
『そうよ。ほ……ろ、ロルフにたのまれたから、仕方なくね! べ、別に、あの子が困ってたって、ぜんぜん気にしてないけどね!』
ホリーに頼まれて来たのだろうが、まだ素直に言うのが恥ずかしいらしい。照れ隠しに父の名を出して、弁当を渡してくれた。
『じゃあ、かえるわ。がんばってね、クラウス』
「ああ。父上とホリーに礼を伝えてくれ」
『仕方ないわね!』
ツン、と顔を背けて戻っていく。だいぶ離れた所でソワソワと振り返って、
『と、とうさんも、ケガ、しないでね……』
『案ずるな。俺ならば大丈夫だ』
『うん……』
恥ずかしそうに、アーニャは今度こそ走って帰ってしまった。
「アーニャは相変わらず可愛いな。さっき振り返って何て言ってたんだ?」
「オールに、ケガをしないでね、と」
「へえ、何時もは素直じゃないのに、可愛いなぁ」
食堂で弁当を広げると、今日は珍しく手紙が入っていた。カティスがパンを買いに行く間に席取りをしながら手紙を開く。綺麗な筆跡で、クラウスの身を案じていた。
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