第四章 訓練生の一日

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地図を片手にチームに分かれ、迷宮付近の入口を探して雪をかき分けながら進む。フェルナンドとフォルク、アッシュはそれぞれ相棒の鳥達を空に放った。 直ぐに人が通れそうな入口を見つけたフォルクの相棒のナハトが戻ってきた。やはりこういった捜索は鳥達の方が優れている。 案内されるままに雪に埋もれた小さな入口を見つけ、全員で雪を掘って道を開く。 足元にポッカリと口を開いた入口から、先ずはフェルナンドが入って中を確認する。 「入ってきて。ひとまず危険は無い」 指示に従って中に潜り込む。中は適度に暖かいが、光が届かない為に真っ暗だ。フェルナンドが灯した松明が無ければ、何も見えないだろう。 「どうやら、この辺りにいるようだね」 フェルナンドは乏しい明かりを頼りに地図に印を付けてくれた。最後に残ったアッシュに、 「アッシュ、狼煙を上げてくれるかい? 私達は中の様子を確かめてくるから、他の隊員が来るまで待機していてくれ」 「はい!」 アッシュが狼煙を上げている間、他のメンバーで慎重に内部を確認する。松明を片手に先頭に立つフェルナンドが息を潜めて照らせる範囲を確認していると、 「先生。奥に明かりが見えます」 フォルクが何時もはかけている眼鏡を外して、真っ暗な奥を指差した。のっぺりと重く暗い闇の中に何も無いと思ったが、針の先のようなオレンジ色が、少しずつ大きくなっていった。 「オーイ! 大丈夫かー!」 「先生ー!」 すがるような半泣きの声が答えて、駆けてくる。どうやら、この付近を捜索していた下級生達だ。初めての野外実習でいきなり地震にあったのだから、恐ろしくて堪らなかっただろうと思ったが、違うようだ。 必死で駆けてきた生徒はボロボロ泣きながらフェルナンドにしがみつき、 「せ、先生、大変です! アルフ達が!」 彼等の目の前で足元の地面が消えるように吸い込まれていったと言う。突然の地震に、ようやく見つけた仲間の姿に安堵したところで、いきなり消えてしまったのだ。 パニックになるより驚いて腰を抜かして、むやみに動き回らなかったのは幸いだった。クラウスが松明を借りて慎重に確認すると、地面が急に崩れ落ちてかなり深く広い穴が開いている。
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