第四章 訓練生の一日

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地上に生息する種は掌ほどの大きさにしかならないが、迷宮に生息する種は一メートル程に成長し、羽に毒を持っている。その美しい外見で好事家が多く、特に迷宮のクリスタルモルフォは高値で取引されるのだ。 冒険者が金銭目的で狩りを試みるのだが、巣に近付く者には容赦せず集団で襲いかかって毒の餌食とし、小動物の場合、巣に絡め取られて捕食されてしまう。 対策としては、とにかく毒の粉を吸い込まない事。体に付着しても無害だが吸い込んだが最後、全身が麻痺を起こして動けなくなり、集団で襲いかかる蝶の糸に絡め取られて巣の一部として朽ち果てるのだ。 「まさか、巣の中に全員落ちたのか?」 「ホー……」 クラウスの予想にナハトは頷いた。 良い方向に取ると、それはどんなに高い場所から落ちても怪我は避けられる。クリスタルモルフォの巣は弾力性のある丈夫な糸で作られており、通りかかる虫や小動物を捕らえて食べるので、その巣は非常に耐久性が高い。 悪い方に取ると、その美しい捕食者の真っ只中に落ちた者を、気取られないように助けるのは至難の技だという事だ。 『最悪だな。俺はアレを好かん』 「誰だって好きにはなれないだろう……」 そんなものを喜んで標本にする好事家の気が知れない。 フェルナンドが立てた作戦を元に、クラウス達はナハトが探り出した最短の道で救出に向かった。
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