放課後の傘

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本を読み終えてふと窓の外に目をやると、静かに雨が降っていた。 図書室に向かった頃はまだ曇り空だったから、寄り道なんかせずにさっさと学校を出ればよかったと後悔した。 雨が降りそうだから……と、部活動を中止にしたところもあると小耳に挟んだのに。 どうしても続きが気になっていた小説を読了した満足感も少し薄れた気がしてしまう。 私は小さくため息をつくと、重たい腰をあげて図書室を後にした。 雨は静かに降り続いている。 激しくならなければいいけど……と、鞄の中から折りたたみ傘を取り出した。 その日の天気予報がどうであろうと、私は常に折りたたみ傘を持ち歩いている。 そういう性格なのだ。 ふと顔を上げると、校舎の入り口に人影が見えた。 スラッとした長身に小さい顔、柔らかそうな髪と切れ長の瞳、そしてどこか物憂げな眼差し─。 クラスメイトの松尾くんだ。 私は彼とほとんど喋ったことがない。 というよりは、彼が誰かと話を弾ませているのを見たことがない、とでも言った方がいいのだろうか。 落ち着いていて寡黙、それが他の同級生よりも大人びて見えるような、そんな印象だ。
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