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土曜日の昼時ではあるが、カントリー風味あふれるアンティークの調度品で統一された店内に、さほど客は多くない。
大学生とおぼしきカップルが一組、美味しそうなホットケーキを食べている。
その他には三十代くらいの女性が一人で読書をしているだけだ。
無理もない。『ゼペット』は表通りと並行する路地の一角に建っている。
外からは店内の様子も、よく見えない。
たとえ、そこに店があると知ったとしても、初めて入店する際には、ちょっとした勇気と覚悟を必要とするような雰囲気だ。
よく言えば玄人向け。
悪く言えば、どこかいかがわしさの漂う店構えと言えるだろう。
なにしろ店名からして『人形喫茶ゼペット』だ。
駅前に立地するような名の知れたコーヒーチェーン店にこそ安心を覚える層からしてみれば、得体の知れない店と思われたとしても不思議はない。
たとえ近隣住民といえど、好奇心をそそられることがあっても、実際に足を踏み入れたことのある人間はそう多くはないだろう。
それが雛太にとって『人形喫茶ゼペット』という店の第一印象だった。
瞳瑠先輩に招かれたのでなければ、雛太も自ら進んで入ることはきっと無かったに違いない。とはいえ、これから夕方にかけて散歩などで立ち寄る客が多少なりとも増えるのだろう。
となれば答えは決まりきっている。
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