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「でも、そもそも瞳瑠先輩がウェイターやれば済む話じゃないの?」
「今日はバイトの人が急に休んだ上、来客対応があるんだよ、人形の方のな」
「人形の方の? ――ああ」
確かに『ゼペット』の店内には《人形の修理、承ります》と記された木製の案内板が吊るされていた。趣と伝統を感じさせる古めかしいデザインだ。
「それって全部、瞳瑠先輩が修理してるの?」
「俺がやらずして誰がやる」
「へえ、案外、本格的なんだ」
「俺で手には負えないものは、実家のじいちゃんにヘルプする場合もあるけどな」
「なんだ。やっぱり、そうか」
「そら、早速おいでなさったぞ」
瞳瑠先輩が顎をしゃくって示した人物が、ドアの上部に付いたベルの音を奏でながら入店してきた。
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