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店内に優雅な歩みで現れたのはカーディガンを羽織った老婦人。
身長は百六十に満たない程度だ。
年齢は六十代か、もしかしたらそれ以上かもしれない。
けれど背筋はまっすぐ伸びており、若々しさが程よく保たれている印象だ。
目鼻立ちも小作りながら整っており、若かりし日の可憐な美貌を思わず想起させられる。
そんな老齢ながら上品かつ華やぎのある姿は、古めかしさそれ自体すら魅力となっているアンティークのドレッサーを髣髴とさせる。
可愛らしくも美しい。老婦人を一見して雛太はそう感じた。
「私、人形の修理をご依頼した若林と申します」
「若林由紀子様ですね、お待ちしておりました」
瞳瑠先輩が微笑をたたえながら、女王の謁見をたまわる兵士のように恭しくお辞儀する。
「ご担当の方をお呼び頂けるかしら」
「かしこまりました」瞳瑠先輩は快く応じたかと思うと「わたくしでございます」
珍しく茶目っ気のある顔をして返事する。
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