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俺はエロ動画を見るときのそれのように、ノートパソコンのイヤホンジャックにイヤホンを指した。
部屋のドアと対面になるようにテーブルに座り、
途中で母親が入ってきても気づけるように、画面を壁側に向ける。
もちろん、実家を出てからしばらくたったのだから、
エロ動画視聴中に母親が入ってくるなんて事はありえないのだが。
俺は注意深く再生カーソルを30分ほど移動させたり、また早送りしてみたり、
エロ動画閲覧で鍛えられた指の微調整を働かせた。耳を傾けて、音声も聞き取る。
ノートパソコンは、部屋の全てを映し出し、録画はしていなかった。
だが、俺の部屋の中に、彼女が見知らぬ男を連れてきたのはわかったし、
楽しそうにおしゃべりをしたり、お茶を出したりしたのも見えた。
そして、
俺は人類46億年の歴史に思いをはせた。
生命誕生のときから、俺の先祖に、一人として童貞は居ない。
それは彼女も同じで、かの見知らぬ男もそうだろう。
俺は、質の悪い隠し撮りAVを見た。
撮影セットは俺の部屋だ。笑えるだろう?
男が帰った後に、彼女は部屋の窓を開けて換気したり、
いつもは洗わないくせに、必死に二人ぶんのコップを洗ったり、
使用済みティッシュをゴミ箱に押し込んで消臭剤をかけたあと、
ゴミ出しに出かける姿を見届けた。
週末はいつも掃除がきちんと行き届いていたことを思い出した。
毎週。
毎週毎週。
毎週毎週毎週。
毎週。
俺は、質の悪いAVの再生ボタンを閉じた。
これはさすがに抜けねえわ。
そして、重い重い動画ファイルをゴミ箱につっこみ、
ほかに突っ込まれていた、エロ絵とかいらないフォルダと共に、ゴミ箱を空にした。
俺はパソコンをシャットダウンして、ノートパソコンを閉じて、
イヤホンを抜いて、きちんと縛ってポケットにしまって、
しばらくの間天井を眺めていた。
ずっとそうしていただろうか。
・・・君、おゆうごはんできたよ?と、部屋をノックする音が聞こえた。
今行くよ、と俺は立ち上がった。
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