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■3
次の日の月曜日、彼女は仕事に出かけ、俺は部屋に一人居る事となった。
せっかくの休日なのに、早く寝たせいで、前日に何もやらなかったせいで、
体の調子はすこぶるよく、早く起きてしまった。
俺は買出しに出かけるために、車のキーを持って玄関から出た。
玄関のノブを触るときに、あの男もこれに触ったのだろうな、と思った。
思わず、キーについている季節はずれの静電気よけで、手をぬぐった。
この気持ちは何なのだろう。
よく、わからない。
空は、この季節にしては珍しく、気持ち悪いほどに晴れている。
幼い頃、ばーちゃんちに行ったときのことをぼんやりと思い出していた。
あの日も、こんな天気だった気がする。
年上のいとこに、木でできた蒸気機関車のおもちゃを取られて、
すごく悔しくて、部屋の隅で泣いたことを覚えている。
畳のふちの、あの緑色の角の部分。
男のクセに泣き落としかよ、といった表情の、やはり幼い年上のいとこは、
しぶしぶと蒸気機関車のおもちゃを返してくれたが、
既に「ぼく」はそれが気に入らず、さらにかんしゃくを起こして泣き喚いた覚えがある。
食料の買出しを済ませ、ドラッグストアでトイレットペーパーを買い、車を出発させ、
おっとしまった、昨日の洗い物、台所洗剤がなくなるんだったと思い出して、
途中で俺はしかたなくコンビニによった。
タオルや洗剤、日用品が置いてある棚で、俺はゴムが目に付いた。
なんとなく、もう使わないだろうな、と思った。
その隣にある、ライターを目にした瞬間、俺の気持ちは決まっていた。
昨日のビデオに写っていた、あの男。
赤いパッケージを取り出し、あわてて彼女に止められる、あの動作。
彼女の服に一瞬ついた、あのタバコのにおい。
コンビニの店員に、24番をくださいと番号をつげ、
俺は学生時代に、あんなにも医療学校で学習した、
発がん性、健康への被害、副流煙の有害物質、依存性、中毒性、
有害化学物質がたっぷりとつまった、タバコを購入した。
こんなにも簡単に買えるのだな、どおりで喫煙者が減らないわけだ。
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