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煙を青空に噴出した。 古来、天に上る煙は、神への祈りをあらわしていたという。 しばらくの間、俺はずーっとそうやって、タバコをふかしていた。 灰を落として。 火をつけなおして。 風向きが変わって、煙が目に入って、ちょっと涙目になって。 砂利に火を押し付けて、俺はずーっと考えていた。 何故、外で吸うのか? それは、部屋がタバコ臭くなるのが嫌だからだ。 タバコを吸っていないときに、タバコの臭いをすうと、吸いたくなる。 人がふかしているタバコは嫌いだが、自分が吸うタバコは好きだ。 自分の女を穢すのは好きだが、穢されるのは大嫌いだ。 俺は、何を間違えたのだろう? 彼女を、もっと愛すべきだったのだろうか? だが、もともと俺は、彼女のことなぞ微塵も好きではなかったような気がしてきた。 俺は恐らく、彼女を、いや人を、愛するには怠けすぎたのだ。 六本目を吸い終わって、これで最後にしようと思って、 七本目を吸った。 八本目の半分で、俺は砂利にタバコを押し付けて、 室内に入り、口をゆすいで、歯を磨いた。 あとは、いつもの休日の通り。 家事をして、本を読んで、ゲームをして、夕食の支度をして。 彼女が帰ってきて、「ちょっとタバコの匂いがするね」と言われて、     
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