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言ってしまった。 言葉は、俺の唇を離れて、彼女に届いてしまった。 突然のことに彼女はぽかんとして、 何が起きたのかわからないように、彼女は唐突に動きを止め、 なんで、と訪ねてきたので、俺は何も言わずに首を横に振った。 そうしているうちに彼女の目には涙が溜まり、彼女は泣きじゃくり始める。 残念、好いている女の涙だったら興奮するんだけどな、とちょっと考えた。 「私、なにか、した…?」 してるだろ。 と、思いつつ、俺は黙って首を横に振る。 もう、君の事が、好きじゃなくなったんだ。 適当に嘘を並べる。 「でも、でも…!」 彼女は泣く。 女の涙ってのには好意を持ってる男にしか使えねえんだよ。 と、思いつつ、「ごめんね」と俺の唇は動いた。 「…そんな、突然…!」 泣きじゃくる彼女に、 いや、突然もクソもねえよ、何ヶ月も前から別の男家に連れ込んでズコパコやってただろクソが、 と、思いつつ「ずっと言えなかった」と言っておく。 彼女は何も言わず、泣きじゃくるのみとなった。 俺は、俺が知っていることを、彼女に言うつもりはなかった。 たしかに、人を痛めつけたり、怒らせたり、憎悪させたりするのは好きなタイプだが、 彼女には、既にそういった感情すら沸かなかった。 隠し撮りした動画を見せ付けるか?反応を見るか? いや、既にあの動画は削除している。 それに、見せるのが面倒くさいし、俺が黙ってこうしたほうが、 全てのことが丸く収まる気がする。嫌がらせをする気すら起きない。 …この女は、今何を考えているのだろう? 「じゃ、近いうちにはこの部屋を出て行ってね」 俺が発した言葉は、俺が想像した以上に、冷たく部屋に響いた。 「おやすみ」
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