■1

2/6
前へ
/19ページ
次へ
俺はソファーに座って新聞を読んでいたし、彼女はソファーでテレビを見ていた。 ニュース番組だろうか、バラエティ番組だろうか。 考え事をしながら新聞を開いていた俺には、全く判断がつかなかった。 俺の目は新聞のニュースを滑るばかりで、内容は全く入ってこない。 そもそも、俺はテレビ番組をほとんど見ない人間だったのだ。 この部屋に、彼女が転がり込んできてからというものの、やっと俺のテレビは電波を受信し始めたし、 ずっと一人暮らしだった俺の部屋は、 彼女が料理を作ったり、部屋で着替えたり、風呂の後に髪を乾かしたりと、 ずいぶんといろんな「絵」が見られるようになっていた。 彼女は眠くなったらしく、テレビを消した。 ずっと気にも留めていなかったテレビの音なのに、消されたとたんにその静寂に気が引き締まる。 じゃあ、・・・君、わたしそろそろ寝るね、と彼女は俺の名前を呼んだ。 彼女は返答が欲しそうに、俺の顔を眺めた。 ずっと言いたかったその言葉は、俺の口から沸いて出てきた。 言うつもりはなかったのに。 いや、ずっと言いたかったのだから。 「別れよう」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加