2人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はソファーに座って新聞を読んでいたし、彼女はソファーでテレビを見ていた。
ニュース番組だろうか、バラエティ番組だろうか。
考え事をしながら新聞を開いていた俺には、全く判断がつかなかった。
俺の目は新聞のニュースを滑るばかりで、内容は全く入ってこない。
そもそも、俺はテレビ番組をほとんど見ない人間だったのだ。
この部屋に、彼女が転がり込んできてからというものの、やっと俺のテレビは電波を受信し始めたし、
ずっと一人暮らしだった俺の部屋は、
彼女が料理を作ったり、部屋で着替えたり、風呂の後に髪を乾かしたりと、
ずいぶんといろんな「絵」が見られるようになっていた。
彼女は眠くなったらしく、テレビを消した。
ずっと気にも留めていなかったテレビの音なのに、消されたとたんにその静寂に気が引き締まる。
じゃあ、・・・君、わたしそろそろ寝るね、と彼女は俺の名前を呼んだ。
彼女は返答が欲しそうに、俺の顔を眺めた。
ずっと言いたかったその言葉は、俺の口から沸いて出てきた。
言うつもりはなかったのに。
いや、ずっと言いたかったのだから。
「別れよう」
最初のコメントを投稿しよう!