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次の日、俺はハッタリをかけることにした。 気のせいだと願いつつ。 出勤のときに早めに家を出て、忘れ物をした、と時間をかけて家に戻る。 簡単である。 月曜日の朝。 俺はスマホを充電器に刺したまま、仕事に出勤するために、家を出た。 その月曜日は、彼女も仕事のはずだった。 いつも俺が先に家を出て、あとに彼女が家を出ていた。 じゃあ、いってきます。 俺は彼女に挨拶をして、彼女に見送られて、家を出る。 共用の駐車場に行き、車にキーをさし、運転し、 近場のコンビニに行き、缶ジュースを1本買うと、 家に引き返した。 インターホンもならさず、いきなり鍵を開けてはいる。 彼女の靴はそこにあった。 俺は、何も言わずにリビングに入った。 はたして、彼女はそこにいた。 彼女は、髪をとかしている途中だった。 明らかにこちらを見て固まっている。 やってはいけないことをやったときの、子供のような。 いたずらが見つかった、猫のような、表情。 俺は、あらかじめ用意しておいた言葉を言った。 あ、ごめん。まだいたんだ。 今日仕事休みだったんだね。 彼女は、しばらく固まったあと、 う、うん、そうなの、ごめん、黙ってて、今日休みなんだ、 と息をつくように、途切れ途切れに言葉を吐いた。 ごめん、家にまだ居るとは思わなくて、 忘れ物しちゃって、ほら、スマホ、充電器に指しっぱなし。 あはは、ドジだなぁ、 じゃあ、いってきます、 はい、今度こそ行ってらっしゃい。 俺は家を出て、もう1度車の運転席に座った。 ミラーの位置を直し、出発の準備をして、 頭痛を感じたように目を閉じる。 デート用にめかしこみ、ヘアをセットしている彼女が、 瞼の裏に現れる。
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