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帰ってきたときに停止を押せば、簡易な監視カメラの出来上がりだ。
少しだけ罪悪感があったが、それはなにかの感情によって塗りつぶされた。
ここは、俺の部屋なのだ。
前日、俺は本当に何かのソフトをインストールして置いて、
彼女の前で「あれ、また停止しやがった」と、自分で停止ボタンを押しながら、2,3回呟いておいた。
今日の朝、俺がスーツを着て出かける前に、そっとパソコンの録画ボタンを押しておいた。
少しだけ、マウスを持つ手が震えた。
そして、彼女が部屋に居ない隙を見計らって、
ノートパソコンの画面自体に黒い防護シールを張っておく。
次の日の朝、土曜日、俺の出勤日、彼女の休日。
じゃあ、行ってくるね。と声をかけると、
いってらっしゃい、と彼女は微笑んだ。
俺は一瞬、この女は、腹の中で何を考えているのだろうと思った。
なぜこんな笑顔が出来るのだろう?
行ってきます、と言って俺は、録画ボタンの押された部屋を出た。
土曜日の夜の帰宅。
録画のし過ぎで挙動が重くなったパソコンをマウスでたたき起こす。
残念なことに、今日は彼女自身も出かけたらしく、
録画ファイルにはしんとした室内と、あとは帰宅した彼女がテレビを見る姿しか映されていなかった。
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