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あと少しで思い出せそうなんだけど。」心の中で申し訳ないな。と思いながらそういった。
幸せな時間は過ぎるのが早い。
気づけば明日にはここを出ていかなければならない。すっかり梅雨になったので部屋で二人で黙々と読書をしていた。私には、言わなくてはならないことがある。どうしても、でも、いえない!!勇気がない。言わなくては後悔する。深呼吸をして、大きく息を吸った。
「ねえ、ヒロ。私、明日にはここを出ていかないとでしょ?」
「あぁ。そうだったな。」
「うん。私ね、嘘ついてた。あの日、来た日に私倒れたでしょ?その時に全部思い出したの。でもね、酷かった。家族からは存在を無視され、友達からもいじめれてた。でもね、私、笑ってたの。全てを諦めてたの。自分が怖かった。次の日の、ここにいても変わらないし、もっと酷い仕打ちをうけるんじゃないかって不安だった。でも、ヒロが優しく微笑んでくれて全てを受け入れてくれたように感じたの。ねえ、私頑張る。だから、また、ここに来ていい?私の居場所をくれる??あとひとつ、私、貴方のことが好きだわ。ずっと前から。愛してる。まさか、貴方も生れ変わっているなんて。」
涙が頬を伝った。顔をあげると、彼も泣いていた。「あぁ。そこまで思い出したのか。零いや、一葉か。僕も愛してる。ずっと、今も。」
このまま永久に離れたくなかった。外はあの日と同じ夕焼けだった。
唇と唇がふれ合い静かな時間が過ぎていった。ーさようなら。また会う日まで。ー
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