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雨が降ると喜ぶ人、嫌がる人。人によるけど、僕は喜ぶ、いや嬉しくなる方だ。理由は至極、単純。上空からの滴を心待ちにしている人との出会いの瞬間が訪れるからだ。
彼女との出会いは、梅雨でも無ければ嵐でもない、晴れの合間の時々雨による宿りの場で、会話をしたことから始まった。
「うわー急に降られちゃったな」
そこにいたのは僕と女性。話しかけるつもりで言ったわけじゃ無く、独り言で何気なく口走っただけだった。
「雨はお嫌いですか?」
「えっ?」
驚いた。ふたりしかいないとは言え、見知らぬ人に話しかけて来るなんて、何か雨に対して想いでも持っているのだろうか。どう答えるべきなのか迷った。雨に対して、どちら側の想いをお持ちなのか。
隣にいる彼女は、クールビズのワイシャツ姿の僕と違って紺色のジャケットを羽織り、ワイシャツとパンツスタイル、そして傍らには見たことの無いような傘が置いてあった。
「好きか嫌いかと聞かれたら、時と場合に寄る……ですかね」
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