たとえ、こわくても。

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途方に暮れていると、ふと昼休みの同僚たちの会話を思い出した。 「知ってる?近くに『傘貸し出し専門店』があるんだって」 「へ~商売になんのかな?今どき、100均でもビニ傘売ってる時代だぜ」 「それがさ、ちょっと変わった店らしくて。なんでもそこで借りた傘をさすと、『その人の潜在的な悩みを解決するための人物』に出逢えるっていう…」 「誰が信じんだよ、そんな噂」 「だよな~」 けらけら。笑う同僚を横目に、結子はその話題に密かに関心を抱いていた。 同じ事務仕事の毎日、特にときめくことも起こらない単調な日々。20代も後半に入ったにも関わらず、彼氏どころか気になる人もナシ。 現状に不満があるわけではない。しかし、このままではいけないという焦りもあった。 「傘貸し出し専門店」。 しかも「潜在的な悩みを解決する」? 面白いではないか。
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