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たとえ、こわくても。
ああ、ついていない……。
水口結子は、会社のエントランスに設置されている傘置きを見渡し、はぁと小さく溜め息をついた。
残っている傘は数本。どれも柄つきのものだが、あるはずの自分の傘が、そこにはなかった。
ガラス扉ごしに外をみる。雨は激しく地面を叩きつけている。
……こうなれば、仕方ない。
結子はカバンで頭をかばいながら、向かいのコンビニに猛ダッシュした。一瞬でずぶ濡れになった身体をタオルハンカチで拭い、店内で目的の物を探す。が、ない。
本来、傘が売っているであろうコーナーには「売り切れました」の掛け札がかけてある。
結子は頭を抱えた。ここから駅まで徒歩10分。最寄り駅から自宅まで、さらに徒歩15分。
傘をささずに帰るのは無理だ。
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