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「なあ琉生、一緒に暮らすか?」
梗慈が不意にそう言ったのは、すれ違いの日々が始まりだして4か月を優に超えた11月も残り僅かな頃だった。
梗慈はそもそもきっちりと休みがあるわけでもなく、融通が利く時もあれば缶詰め状態なこともある。
かくいう俺も定休日とは名ばかりのケーキ職人なわけで、お互いがどこか諦めていたから何とかなっていただけで、流石に今回ばかりは梗慈もまずいと思ったようだ。
事の発端は、12月に入ればクリスマス関係でどうしても休みの取れなくなる俺の都合に合わせて、11月の末に一緒にゆっくりしようと約束していたのだが、急に梗慈が事務所の当番を変わらなければいけなくなったと言いだしたことにある。
珍しく何も用事がない日と聞いていたので、少しくらい呼び出されることがあっても、まあ仕方ない、と思いながら、その日休みを取っていた俺はかなりがっかりして素っ気ない態度を取ってしまった。
後で大人げないことをしたと猛省したが、梗慈は俺よりも随分大人だったようでそれに怒るでもなく、俺の機嫌を取るでもなく、ましてや昔喧嘩っ早かった梗慈の癖に喧嘩を吹っかけてくる事も無く、ただ
「悪いな」
と一言言っただけだった。その態度の格好よさに俺は己の態度を猛省することになったのだ。
とは言っても楽しみにしていたことも事実で、当番となるとちょっと顔を見るだけや、電話をするだけも難しいので、と言うよりはよっぽどのことでもない限りはこちらから遠慮したいので、一日暇になってしまったし、どうしようかと頭を捻らす。
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