一輪の華

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「華ーー!!」 初めてじゃないのか? こんな大声出したのは。 どれだけ久しく呼んでないだろう。 あいつの名前なんて。 大声で呼びながら探し回ったが見付からず、 家に戻ろうとした時、 入り口の前で座りながら一輪の花を持ってるあいつがいた。 「どれだけ探したと……」 俺の言葉を遮られ、いきなり抱き着いてきた。 「貴方がいないと」 「私は咲かないよ」 そう言いながらこいつは涙を流していた。 いつぶりだろう。 人に抱き締められたのは。 人に必要とされたのは。 人の温もりを肌で感じたのは。 俺が涙を流したのは…。 こいつの手には一輪の花が握られたままだった。
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