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「あ、ごめん。サプライズのほうがよかったよね」
「そうじゃなくて!」
幸希と亜紗のやりとりを見て、むしろ志月のほうが苦笑する。
「聞き出したみたいになっちゃいましたね。ごめんなさい」
「や、そんなことは、ないけど」
幸希はちょっと戸惑いながら言う。
確かにデートで初めて着て、「いいですね」とか「似合ってますよ」とか言われたかった、とは思っていたので。
最近買ったことはわからなくても、志月なら服を褒めてくれると信じていたので。
もう、亜紗ったら。
亜紗のことをちょっぴり恨んだ。この楽しさの中ではシャンパン一滴くらいではあったけれど。
「鈴木先輩と幸希さんは、本当に仲がいいですね。高校時代からそうでしたよね」
やりとりを見ながら志月も楽しそうに言ってくれた。運ばれてきたパスタをフォークで巻き取りながら。
「あれ、よく見てたね。確かにそうだったけど」
亜紗も自分のドリアにスプーンを入れながら答えたけれど、なんだか不思議そうだった。
やはり、同じ部活だったとはいえそれほど長い時間を一緒に過ごしたわけではないのに、把握されているのはちょっと不思議だろう。それにはちゃんと理由があるのだけど。
そして志月はするっと言ってのけた。
「それはそうですよ。だって、僕は幸希さんばかり見ていましたからね」
「え、ちょっと、戸渡くん、それって」
「はい、高校時代も幸希さんのことが好きでした」
ああ、やっぱり。
幸希の顔が熱くなる。
実際に面と向かって言われているので知ってはいたけれど、亜紗という共通の知人に話されるのはやっぱりちょっと恥ずかしい。
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