1章:マイペースでいい?

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 とはいえ、幸希本人はあまり『落ち着いている』という分類には入らないのかもしれない。なにしろ、同僚の男性とは違って、決まった相手、つまり夫や彼氏がいるわけではないのだから。  幸希は今年、二十八になった。適齢期真っただ中だ。実際、友人たちはどんどん結婚していき、早い子であれば子供まで産んでいる。  が、幸希には雲の上の話であった。まともに男性と交際したこともないのだから。  結婚し、子供を考えるのであればそろそろ相手を定めて結婚していなければ、こころもとない。  一応、彼氏が居たことが無いわけでもない。二人ほど付き合った男性はいたものの、両方半年も持たなかった。あちらから振られてしまうのだ。  理由はわからない。ほかに好きな子ができたからだの、曖昧に濁されていた。  それでも相手を見つけなければと、友人に誘われて街コンなどに顔を出したこともある。けれど積極的に話しかけてくるのはちゃらちゃらした男性ばかりで辟易してしまって、それ以来、行くのをやめてしまった。  幸希はどちらかというと、おとなしい性格であるといえた。  外見も、あからさまに清楚というわけではないのだが、派手好みではない。肩より少し長めの髪を、ダークブラウンに染めていて、普段は毛先を少し巻くくらいで仕事をしている。  服装だって、量販店のお手ごろな値段のものと、時折ちょっとしたブランドのものを組み合わせている、雑誌に載っているような『着回ししやすいスタイル』である。見た目が悪いとは思わない。  『ごく普通の、どこにでもいそうな事務職の女性』。そのイメージ通りだろう。  なので『声をかけやすい』と思われるのかもしれないが、そう思うのはどうやら軽いタイプの男性ばかりのようで。幸希の好みとはかけ離れていた。
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