1章:マイペースでいい?

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 幸希の好み。  それは意外かもしれないが、ちょっとクセのある男性であった。  別に、変人が好きだというわけではない。ただ、なにか不思議な趣味を持っていたり(過去に交際していた男性は、大きなトカゲなどを飼っていた)、思い立ったからというだけで、ふらりと身一つで沖縄まで飛行機で飛んでしまったり。そういうひとのほうが「おもしろいな」「もっと知ってみたいな」と思ってしまうのであった。  けれどそういうひとにはなかなか出会えないし、前述のとおり、出逢ったとしてもうまくいかずに終わってしまうのである。こういうのは高望みなのかなぁ、と友人に相談したこともあるのだが「そうでもないんじゃない?」などと言われて終わる。 「結構そういうひと、いると思うよ」 「イベントとかだったら会えるかもよ」 「サークルとか入ったら? ちょっと変わった趣味のさぁ」  そう勧められるのだが、あまり気も進まない。貴重な休日をつぶしたくなかった。  つまり、恋愛に関してあまり積極的ではないのである。こんなことではいけない、とは思うのだが。結局なんの出会いもない、会社との往復になってしまっていた。  出会いはないけれど、幸希が『貴重な休日をつぶしたくない』と思うような趣味はある。  それは和服に関すること。たとえば和服で出掛けたり和雑貨のお店に行ったり、あるいはアンティーク着物を見に行ったりすることだ。  アンティーク着物に関しては、専門に取り扱っている店のほか、小さな催事やイベントなどがおこなわれることもある。  アンティークだけあって、もちろん気軽に購入などはできない。けれど、眺めているだけで楽しいものなのだ。
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