10章:親友×恋人

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 幸希と亜紗の前にはシャンパンのグラスがあった。志月を待つ間、一時間ほどあったのでサラダや軽いつまみをいただきながら一杯先にやらせてもらっていたのだ。  なににしようか、分厚い表紙のメニュー表をめくったり、別にあるクラフト紙の特別メニューを見ている志月を見ながら、亜紗はゆったりシャンパンを傾けている。  亜紗は高校時代、部の部長を勤めていただけあって積極的な性格だ。  そう、交際前に戸渡くんと再会して、という話をしたときすぐに「付き合っちゃいなよ」と言ったくらいには。  なので10年ぶりに再会した志月に対してもなにも臆する様子を見せずに、すぐに普通に話し出した。それは高校時代のときのような、でもちゃんと大人になったやりとりのような、不思議な喋り方だった。  メニューも決まって、すぐに志月の選んだワインも来た。濃い口の赤ワインだ。濃紫がうつくしい。 「じゃ……幸希と戸渡くんの交際にかんぱーい!」  亜紗がグラスを掲げて、チン、と音を立てて3つのグラスが触れ合った。  なんだか恥ずかしかったけれど。  交際を祝われるのは。  でも嬉しい。仲の良い亜紗に祝ってもらえて。 「今日はショッピングに行ってきたんですよね」  ワインをひとくち飲んでから志月が言った。 「うん。久しぶりだから色々見ちゃった。セールもやってたし」  嬉しさからか、はじめは亜紗の前で志月と話すことにちょっと緊張を覚えていたけれど、すぐにいつもどおりに話せるようになったのは。 「買い物にはちょうどいい季節ですよね。まだ夏ものも着ますしね」  言った志月に、亜紗がにやにやとしながら言った。 「幸希、新しいワンピース買ったんだよ。戸渡くんに見せたいって」 「ちょっと、亜紗!」  幸希は、あわあわと言った。  どうやら亜紗はちょっと酔っているようだ。シャンパンももう二杯目なので仕方がないかもしれないが。
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