5人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
学校の先生に間違いはない。と思っている節がある。
「......それで?今朝何かあったの?春君も早めにおウチ出たんじゃないの?」
ほっ、春君呼びに戻ってくれた。どうやら姉貴として話を聞いてくれるらしい。
ただ......本当の話をするわけには、やはりいかない。姉貴にはもうこれ以上負担をかけたくないのだ。
俺は昔、いじめられていた。
4年前の話だ。___いや正確にはいじめではないのかもしれない。ちょっかいをかけられて、それがすこしばかりエスカレートしてしまったのだ。
俺自身は別に苦ではなかった。たかがちょっかいだと割り切ることもできた。俺1人ならば。
俺と一緒に居た女の子にまでちょっかいが及ぶようになったのだ。それが我慢ならなかった。当時の先生が止めなければ、もう少しで喧嘩になるところだった。
そしていじめ問題として大きくなり、親の居ない俺の保護者代わりとして姉貴が呼び出された。
その頃の姉貴は、神山高校への赴任が正式に決まり、準備や研修と大忙しの時期でもあった。
かたや保護者として責務、かたや先生になるための準備。その時の姉貴の心情は計り知れない。
その後いじめ問題も収束し、俺たちへのちょっかいは激減した。
しかし、一緒に居た女の子。茜とは疎遠になってしまった。
それでも普通に高校生活を送れるのは全て姉貴のおかげなのだ。
「ああ、早く家を出たよ。商店街で寄り道してたんだ。」
ごめん、姉貴。絶対迷惑はかけないから。
「______はぁ。危ないことはしないのよ?約束できる?」
「あ、ああ。約束するよ。」
嘘だってばれてる。......昔から嘘つくの下手なんだよなぁ、俺。
「はいっ。じゃあ遅刻の件はこれで終わり。次。」
「で?コレは何?」
俺の進路希望が書かれたプリントを指でトントンしながら姉貴、いや、神崎先生が俺を見る。
「え~っと~ですねぇ......。」
汗が噴き出してくる。どうする?どう誤魔化す。
「先生本当に心配してるんですよ。神崎君は将来何をしたいの?」
正直、想像出来ないのだ。
俺は数年後一体何をやっているのか。進学している?仕事をしている?それとも......。
それでも今やらなくちゃいけないことなら、ある。
あの子。夏樹君を救うこと。
最初のコメントを投稿しよう!