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(……いや違う! 今行かなきゃ!)
突然雷鳴のように閃いた、予定変更と決意表明。
自分で何故そうしようと思ったのかは、十分分かっている。
これは恋だ。昂揚だ。ときめきだ。
それ以外に、理由はない。
私はすぐ側にある整骨院のすりガラスを鏡に見立てては髪を必死に整えて、あのカフェへと踵を返していた。
──きっと、この時間に雨が降りだしたから。
雨に煙る情景に浮かぶ、あのカフェが一層美しく見えたから。
あの人が、イーゼルを下げにお店の外に出てきたから。
きっかけを、掴めたから。
だから、私の足はそこへ向いた。
さながら、土砂降りの中で唄いながらステップを踏むジーン・ケリー。
雨足はそんなに強くないし水溜まりも出来ていないけど、軽快なステップが心の水音を心地好く打ち鳴らす。
そんな幸福感と昂揚感に包まれて──……。
扉を開けると、その空間は「いらっしゃいませー」と私を温かく迎え入れてくれた。
……ああ、想像以上に芳しい珈琲の香りと、あの人の笑顔の眩しさ。
小気味良いドアチャイムの音が、ぽつりと注ぐ雨粒のように心臓を優しくノックする。
それは、私がこのお店に通い始める第一歩。
1ステップ目にして極上の、雨の日サァビス。
end
(しかも“雨の日特典”で、お会計から10%OFFしてくれました)
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