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人が行き交う、いつもの商店街。
本屋さんの前で、あわてて子供にレインコートを着せるお母さん。
お惣菜屋さんに挨拶をして、自転車で颯爽と走り去るおじさん。
急な雨にも笑顔を絶やさず道行く人に声を掛ける、八百屋さんの亭主。
骨組みのしっかりした傘を広げて、買い物カートを押すおばあさん。
小雨なんか気にしない、元気な高校生たち。
少し慌ただしいような──だけどじっとりとした重みを纏った人々とすれ違い、雨の匂いとおかずの匂いの混じった商店街を歩く。
そして、いつもと変わらない店構えの、あのカフェの前を通った。
芳しい珈琲の匂いのしそうな、お洒落でアンティークな風合いの漂うカフェ。
店の入り口にちょこんと置かれたイーゼルには、今日のおすすめメニューなんかがカフェ調のおしゃれなフォントで書かれた黒板が立てかけられていた。
可愛らしさや親しみやすさは感じるけれど、すりガラスの向こうはどうにも近寄りがたい大人な雰囲気だった。
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