綿菓子のふわふわ

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白い世界をこのふわふわな綿菓子のような者と歩く。 少しすると、白い地面が薄れて透明な水が浮かびあがり一面水面へと変わった。 美しい景色に暫し見惚れて、足を止める。 なんて綺麗なんだ。 美しいものを見ると心が清らかになると誰かが言ったが、この事に違いない。 輝く水面に惹かれて、このふわふわな者と一緒に見ようと引き寄せた。 ふわふわは嬉しそうに言葉にならない音を響かせた。 コロコロと鈴の鳴るような、それでいて高音でも低音でもなく心地よい音で。 もう少しじっくり見ようと近づいてみれば、水面に映しだされたのは喧騒だった。 思わぬ刺激に水面からパッと身を離す。 ふわふわはくるくる回る。 そして暖かく両手で手を包んでくれた。 大丈夫、大丈夫だよと安心させるように。 そうか、己は1人ではないんだな…その心の呟きがストンと落ちてくるのが分かる。 次に水面を瞳に映した時には冷静に見ることが出来た。 人の世は忙しなく厄介で、難解で、刺激的だが、美しい。 美しい側面だけ見つめても美しさに気づくことはないだろう。 美しさが輝くのは相反する側面があるからで、儚さと力強さや、刺激的で優しいという側面。 たくさんの側面が人にはあって、1つの側面を見つけては一喜一憂するのはおかしいことではないのだ。
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