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「いやちょっと、さすがにそれは……っていうか十キロって何時間……それにあんた仕事まだ残っ……っていうか、っていうか、はあああ?」
駒沢通りを迷いない足取りで歩き出したカナコさんが、上機嫌に空を見上げた。
「ほら、なんかいい月も出てるわよ! 結構なお散歩日和じゃない?」
「散歩ってレベルの距離じゃねえだろ、明らかに!」
そんな風に叫びながらもつい僕はカナコさんを大股で追いかけてしまって、腹ごなしついでにこの人と並んで歩く時間の分だけ、長く一緒にいられるのかなあなんてイカれたことを考えたりする。
今夜あの店には確かに神様がいたんだ。
電話一本で僕においしいクレープを授け、引き替えに胃もたれと明日の筋肉痛をもたらした、迷惑極まりない僕のわがままな女神様が。
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