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「日本の男ってほんとダメ。ピザもろくすっぽ食べたことない田舎もんなんて絶対一緒に生活できないし!」
「そんなこと言うならアメリカ人でも捕まえたらいいでしょう。毎日ピザ食べられますよ、よく知らんけど」
「あっはっは! やだもう面白いこと言っちゃってえ。君が冗談言うの、はじめて聞いたわ、あはははは」
いかにも機嫌良さそうに、あるいは酔っているようにも見える大げさな仕草で口を開けているが、カナコさんの目は決して笑ってはいなかった。
「ガレットお持ちしました」
絶妙なタイミングで届いたガレットの大皿を見た瞬間、僕はごくりと生唾を飲み込んだ。今まで出会ってきたガレットとは見た目がもう全然、違っていた。
「ふふん、どうよ、これ」
すでにナイフとフォークを装備して、カナコさんは真ん中にぷるぷると鎮座している卵を潰そうとしていた。
「……すごい。すごいとしか言いようがないですね正直」
「賭けてもいいわ。一口食べたら最後まで止められないわよ。覚悟はよろしくて?」
艶然と微笑んだカナコさんの顔は、獲物を前に舌なめずりしている狼みたいに見えた。きっと僕の方も涎をだらだらにした野良犬並にはしたない顔をしているだろうと、一応自覚だけはしておく。
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