0人が本棚に入れています
本棚に追加
ばう、ばう、ばう・・
「だから、あんた、黙りなさいよ」美恵子は、思わず、叫ぶ。
「誰だ!」
ばんばん!有無を言わさぬ発砲。
「わ~、見つかった」
それは、埠頭の中でも古い、戦前からあるような倉庫街でのことだった。東丈のところで手に入れた振り子の促すままに、彼女はここにやってきたのだった。
東明会の武器庫を摘発できれば、日本の大半の凶悪事件をなくすことができるからだ。当然ながら、ここも警察は調べたはずだが、見つけられなかった。もっとも、今の警察内に東明会の密偵がいないと考えるほうが、信じられない。いずれ、警察の調査の入る前に隠したのであろう。だからこそ、令状も持たず、自分ひとりでそれらを発見したかったのだ。
むろん、注意はしていたが、この場所にそれがある確信はないわけで、安全なところに愛車の大バイクを止めて、散歩がてらの探索だったのだが。振り子は、”良い子”だった。まっすぐにその場所に誘導してくれている感覚の中で美恵子は、その場所に来たのだ。
見れば、相手が気づく前に、彼女はそのガードマンの存在を感知した。そして、コンテナの陰に姿を隠した。
”ここに”何か”重大なものが在るのは間違いない”美恵子は確信する。しかし、そのときだった。
は、は、は、は・・!
「な、なんだよ」
でかい!子牛ほどの大きさもあろうかという、それはセントバーナード犬だった。
セントバーナードが巨大なのは周知の事実だが、これは、でかすぎる。如何に犬とはいえ、それがこんなに近くに来るまで気がつけなかったなんて、なんてマヌケな話だ。
一瞬、この倉庫の番犬かと思ったが、そうだったら彼女が気づく前に急所に噛み付かれても文句は言えないはずだった。そのヨレた様子は、どうにも番犬らしくない。”捨て犬”と考えるのが順当だろう。このあたりに捨てられる塵芥を喰っているうちに、こんなに大きくなってしまったのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!