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ぺろりん。
大きなグローブの指のような大きさの舌で美恵子を舐める。
「腹が減っているのかよ、おまえ」
はへへへ・・その情け無い垂れ目は、白痴じみていた。尻尾を振る。
「邪魔だ、向こうにいけよ、し、し!」
しかし、その巨犬は動こうとしない。そして・・
ばん、ばん、ばん!
「わ~逃げるぞ!」
たたたたた・・美恵子は、背を向けて一目散に走り出した。
後で考えれば、いつもなら、ここは堂々と、多勢に無勢であろうと打ち返すのが、彼女のいつものやり方のはずなのに。
たたた・・その前をバカ犬が走る。
「逃げ道を教えてくれるというのか、おまえ」
は、は、は・・美恵子は、振り返った犬の顔にそれを感じた。
「ありがとうよ」
執拗に銃撃が追いかけてくる。
「ちいいい・・!こっちか」
無我夢中で角を曲がる。さすがの美恵子も方向を失っていた。
「オ~マイガ~!なんじゃ、こりゃ」
前は、開けた桟橋ではないか。
「くそ・・」
敵が追いかけてくる。
絶体絶命だ!
そのドブの親戚のような異臭を放つ海に向かって、バカ犬が身を躍らせた。
美恵子も、それに続く。
彼女は、確信した、この世界には、神も仏もいないのだろう、あくまでも、たぶん、だが
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