オ~マイガ~

11/11
前へ
/11ページ
次へ
ぺろりん。 大きなグローブの指のような大きさの舌で美恵子を舐める。 「腹が減っているのかよ、おまえ」 はへへへ・・その情け無い垂れ目は、白痴じみていた。尻尾を振る。 「邪魔だ、向こうにいけよ、し、し!」 しかし、その巨犬は動こうとしない。そして・・ ばん、ばん、ばん! 「わ~逃げるぞ!」 たたたたた・・美恵子は、背を向けて一目散に走り出した。 後で考えれば、いつもなら、ここは堂々と、多勢に無勢であろうと打ち返すのが、彼女のいつものやり方のはずなのに。 たたた・・その前をバカ犬が走る。 「逃げ道を教えてくれるというのか、おまえ」 は、は、は・・美恵子は、振り返った犬の顔にそれを感じた。 「ありがとうよ」 執拗に銃撃が追いかけてくる。 「ちいいい・・!こっちか」 無我夢中で角を曲がる。さすがの美恵子も方向を失っていた。 「オ~マイガ~!なんじゃ、こりゃ」 前は、開けた桟橋ではないか。 「くそ・・」 敵が追いかけてくる。 絶体絶命だ! そのドブの親戚のような異臭を放つ海に向かって、バカ犬が身を躍らせた。 美恵子も、それに続く。 彼女は、確信した、この世界には、神も仏もいないのだろう、あくまでも、たぶん、だが
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加