オ~マイガ~

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 不真面目に茶かしているだけという意見も無いわけではないが、東丈の著作の中では部数を稼いでくれる人気のシリーズである。その意味では、自分を俗物だと認めないわけにはいかない。逆さに振っても聖人君子にはなれそうにはないし、なるつもりもない丈であった。それが身の丈というものだろう。 ”絶対神伝説の白眉である旧約聖書・創世記の記述も、多くの神の”成果”や存在を、一つの神が代行というか、吸収してしまったと考えると、分かりやすくなるかもしれない。一週間を七日とする根拠となったこの故事、それぞれの曜日の呼び名に天体名を当てているが、本来は別の神がそれに当たった名残と考えると、むしろすっきりするのではないだろうか。たとえば、太陽神が昼と夜に世界を分けたという風に・・” 「す~す~す~だららった・・」昔あったクレイジーキャッツというコメディバンドがヒットさせた歌を無意識に口ずさむのは、執筆の調子の良い証拠だ。 「おじさま、執筆、上手く行っているようですね」 「おや、美恵子ちゃんじゃないか、どうしてここに、テレポートでもしたのかな」画面から振り向いた丈が言う。  初老だが、匂い立つようなハンサム男だ。どうして、その方面に行かなかったのか周囲が悩む。本人は、セリフを覚えられないからとか色々言い訳しているが、最大の理由は人から言われて”そうかなあ”とは思っているかもしれないが、彼自身が自分を超がつくほどのハンサムだと自覚していない、それを武器にして世渡りしようとしていないのが最大の原因だった。その意味では、むしろマジメに取材や原稿書きにいそしむ姿は”引きこもり”と言っても良いかもしれない。なんとももったいない話だと思うが、こればかりはどうしようもない。 「残念でした、おじさま、扉開けっ放しでしたよ。また、閉め忘れていたんでしょ、無用心ですよ、いつも言っているけど」 「ははは、すまないね。どうも、もって行かれるものが無いと思うとね」 「冗談はヨシコさんですよ。この時代、日本でも昔のNYなみに物騒なんですから。盗るものが無いからといわれて逆切れして傷害事件になっているのも少なく無いのですよ。おじさま、昔柔道をやっていたっていっても、黒帯じゃ無いんですから」 「その遥か前に挫折した。キミのお父さんみたいにはいかなかったよ・・あ、ごめんお父さんの話は禁句だったな」
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