オ~マイガ~

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 美恵子の父、丈の弟の卓は、かなり以前にNY出張中に失踪、そのまま行方不明が続いているのだった。その後、美恵子の母洋子と卓は法律的に離婚が成立、彼女は幼い美恵子を放り出し、丈の姉の三千子が引き取って育て今日に至るのだ。  そういってはなんだが、卓と丈は兄弟といいながらその体形から顔にしてもまったく似ていなかった。それなのに、彼の娘の美恵子、まるで最初からそうであったかのように、姉の三千子にそっくりの大美人に成長していた。  もし、違うところがあるとすれば、その体形であろう。ほっそりとした姉と違い、この娘はグラマーなのだ。それを、革ジャンの中に包んではばからない。髪型もあきらかに、長く炎のように逆巻き、それはあのマンガのルパン*世に出てくる、フジコを意識しているとしか思えない、そういう美女だ。  ただし、美恵子の天職は、女大泥棒にあらず。その逆、日本の警視庁にその人ありといわれるほどの、ハードボイルドにして犯人検挙率も庁内有数の凄腕刑事さんなのだ。数々の難事件を解決し、また、テロリストの修羅場では女だてらに大口径銃をぶっ放して制圧する。カワサキの巨大排気量バイクでどこにでも現れる。  彼女を扱った”警視庁密着!”特番は、常に高視聴率を獲得する人気番組だった。TVのカメラを前にしても、まったくそれが存在しないかのように自然に振舞うのだが、それがまた、宝塚の男装の麗人のように颯爽として、男女を問わず、ファンが多い。 「いつも言ってますけど、もう昔の話ですから、気にしないでください、おじさま」 「うむ、すまない・・で、わが愛しの姪御殿、今日は、何の御用ですかな」東丈は、言った。  なかなかに思うに任せない状況なのだが、それでも日本では有数の・・といっても、どれほどの同業者がいるのか心もとないのだが・・超常現象研究家として不動の地位を得た丈には、こうした余裕からの漂気たセリフが聴かれるようになったものだ。 「ど~ん!差し入れ~」 「おう・・」目の前に現れた巨大な紙袋に丈は思わず声を上げる。正直、これは、いつものことなのだが。 「おじ様、執筆に熱中する戸寝るのも直時も忘れるからと義母が心配しておりまして」 「でも、パチンコの景品、だよね、これ」 「御明察~」 「いくらつぎ込んだの?」 「企業秘密で~す」こんな表情を、恵美子はTVではまず見せない。
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