オ~マイガ~

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 しかし、超常現象研究家として世界にも調査網を広げる東丈、行く先で、エルスーカーゴ一家の名前を聞かない国は無いのだ。二十世紀の禁酒法中のシカゴなみの暴力を平気で実行する男達なのだ。 「ううむ・・それは、いけないが、確か警察よりも、日本のヤクザは自分たちの利益のために、でんでん虫を寄せ付けないようにしていたのではなかったっけ」 「話が変わったんですよ、おじ様」 「うむ・・・」 「おじ様も、今、神戸の山野組、”東明会”の傘下になってしまったことくらいは、ご存知でしょ」 「えっと、そうそう、代替わりして、羽黒獰ってのが親分になってから、神戸の山野組本拠に攻め込んで勝っちゃったんだよな、それで・・」 「その通り。で、その後ろにでんでん虫の陰が」 「マジすか」 「結局、未確認に終わったのですけど、あの”神戸ハルマゲドン”で東明会に武器を提供したわけで」 「なるほど。わが姪御さんは、そのコネを確認しようとして、上司の反対にあったんだ」 「・・そうなんですよ、おじ様。なんとかしてくださいな、おじ様~」 「っていわれても、僕はただの超常現象研究家だからなあ。犯罪、しかも暴力系はからっきし役に立てない」 「そこをなんとか、そこをなんとか、神様、おじ様、東丈様、お得意の超能力で」 「だから、僕は研究家で、超能力者じゃないんだってば」 「そうですか?井沢のおば様は、おじ様、義母様はすごい超能力者のはずだって」  井沢のおば様といっても、実際は血縁ではない。東丈の主催する”超常現象研究学会”通称”超研”の熱心な会員である。ムー時代の王女の前世記憶を持っている、世に隠れたホンモノの能力者であると丈も考えている。その彼女が、丈も三千子も超絶超能力者だといってはばからないのである。迷惑な話だが、丈としては彼女特有の歪んだ冗談だと理解するしかない。  外交官だったお父上と世界を渡り歩き、各国のセレブの間でできたコネを使って手広く商売をする大金持ちの女性なのだ。丈と同じ年なのだが、還暦の声を聞きそうなのに、どこか少女の軽さを漂わせる美女。さらに言えば、彼女と丈の結婚を予測していた人間もいたようだが、”学会員とは結婚しない”という人生方針の丈とともに、結局独身のまま、ただ、両親の願いで彼女はおメガネに適った子を養子に迎えていたはずだ。
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