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ゴーン、と頭に鈍い音が響いた。
はっと顔を上げると、真っ白な空間に少年はいた。ぼやけているが上の方に3つの黒い影と話し声が聞こえる。少年の前には手すりがあった。ああ、ここは裁判所だ。
「急な裁判は久しぶりだ」
しわがれた声が黒い影の真ん中から聞こえた。
「君はこの世界に疑問を持った。それはつまり居心地が悪いということだ、そうだろう」
今度は右端から少しだけ若い声がした。どちらも、声というよりは音声に近い。
「」
答えようとしたが声は出ない。
「ああ、ああ、いいのよ。わかってると思うけど、あなたはここに声などないの」
左端の影が言った。2つに比べると澄んだ声だった。
「ここは外界とは遮断された世界だ。君はこの世界から消える人間を2人見たと思っている」
「だが本当は2人ではない、そうだろう」
「あなたはずっと見えなかっただけ。そう、もっとずっと周りは変わっているのよ、ふふ」
3つの影は楽しそうに揺れる。つまり、1か月前の少女からやっと気づいたということか、と少年は思った。なぜだ。
「なぜ?それはね、その女の子はあなたがよく知っているから。だって話したこともないのに、気にかけていたのはなぜかしら」
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