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そうだ、最後の瞬間しか思い出せない。でも少年はあの子をたしかに可愛がっていた。
「そうだ、君はこの世界に疑問を持った。もし他にも世界があるとしたらどうする、行くか、行かぬか」
少年は首をかしげた。すると澄んだ声が楽しそうに言った。
「声がある世界よ、あなたの声。知りたくなあい?」
「おい、喋りすぎだ。不要な催促は本人の意思を曲げてしまうかもしれない、そうだろう」
声のある世界。そこに、答えがあるかもしれない。だとしたら、行きたい。こんな静かな世界から飛び出して、帰りたい。.......帰り、たい?
「あら、帰りたいって」
「つくづく勘が良い」
「では最後の質問をしなければ、そうだろう」
最後の質問?
「君の、一番大切なものはなんだ」
「帰るために必要なものよ、ぱっと思いつけばいいのだけど、ふふふ」
大切なもの、大切なもの、大切なもの。この世界で唯一親しみを覚えていたもの。それしかない。大切なものは、
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