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動かした右手の先をみやると、目を見開いた女性がいた。大人っぽくなっている。想像以上にきれいになったなと思った。声にならない声は、どうやらきちんと彼女に届いたらしい。自分の声は思ったよりもしわがれていた。
白衣の影が2人来て、何やら声をかけてきたので適当に頷く。
「驚いた、すぐ検査を」
「半年前の......ちゃんに続きまた目覚めるとは、これは奇跡だ」
うまく聞き取れないが、彼らの会話を聞きながら、妹のことを思い出していた。先月ではなく半年前だったらしい。思ったよりも月日は流れているのかもしれない。
上を向くと、カーテンがベットの半分を囲んでいた。口元にはマスク、左腕からはチューブが伸びている。妹はどこにいるのか、祖父はどうなったのか、自分がどのくらい眠っていたのか、まあ後々ゆっくり聞くことにしよう。
「おかえりなさい」
頬を濡らし、右手を握りしめながら彼女はぐちゃぐちゃな顔で私を見つめている。左手の薬指には、少し子どもっぽいシルバーリングがはめられていた。
はて、そういえばさっきまで僕はどこにいたのだろう。ぼーっとしている頭を傾け、窓枠の中の空を見る。雨が上から降っていたことに、なぜだかとてもほっとした。
ありがとう、
「ただいま。」
オルガンのような和音が頭の中に響く。それはおめでとうと言っている3つの声にも聞こえた。
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