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午前8時、ライトグリーンのボードにのり、傘モードをオンにする。ひとり暮らしの簡素な家を出て、少年は検査に向かった。月に一度だけ国全体で行われるストレスチェックだ。
建物と人以外、空と地面をも逆転するサカサマの日。
永遠の底に落ちないように道路には透明な膜が張られ、人々は道路から5ミリ浮き、お椀とキックボードを混ぜたような形をした「ボード」で移動する。
もちろん、雨は下から降ってくる。守るのは頭皮ではなくパンツだ。
ちなみに少年はボードのことを愛着をもって「スズコ」と呼んでいる。心の中でね。
薄い膜の上をビュンビュンと一斉にボードが走り、学校や仕事に向かう。今日はほとんどの人が中央の検査ビル街に向かっていた。
家から5分程度ボードを走らせると、無骨な銀色の骨組みが見えてくる。
「検査ビルⅢ」
今月はここだ。
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