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ストレスチェックは簡単だ。
住人たちは一人ずつ横たわり、機械の中を通るだけ。中はぼやけてよく見えない。だが不思議なことに、時折ぼそぼそと声が聞こえる。
ストレスチェックに引っかかってしまった住人は、裁判にかけられる。裁判といってもそれは通称で、本当は有識者複数による話し合いと、本人の意思確認らしい。
裁判のあとにどこに行くのかは誰もわからないが、戻ってきた人はほとんどいないという。
少年の住んでいる地域は裁判にかかる人は年に1度いるかいないか。住人の入れ替わりもめったにない。
先月、気にかけていた隣の女の子が裁判に行った。ちょうど少年のひとつ前に並んでいた彼女は、連れて行かれるとき笑いながら小さな声でつぶやいた。
「やっとよ、おかあさん」
そのときの少女の顔が、1ヶ月経った今でも頭から離れない。
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