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すっかり夕方になり、少年は「スズコ」と一緒に自宅へ帰った。すると、向かいのおじいさんがドアの入り口で虚ろな目をしてぼーっとしていた。
この地域の住人は口数が少ない。コミュニケーションをとることはないに等しいが、そんな中でおじいさんは少年を見つけるといつも手を降ってくれた。
なぜ、いつもと雰囲気が違うんだろう。疑問の目を向ける少年に気づいたおじいさんは、いつもよりも少し朗らかに微笑んで言った。
「私は幸せだった」
そして、飛んだ。玄関の前の透明な膜は破れ、ひゅーひゅー風が吹いていた。
今日はサカサマの日。
おじいさんはこの街から消えてしまった。
思っていたよりも優しい声だったな、と少年は思った。
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