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隣の女の子に続いて、向かいのおじいさんまで消えてしまった。だが消えた次の日から、もう他の住人は引っ越してくる。
何かがおかしい。少年は思った。ひとり暮らしばかりの国に違和感がなかったわけではないが、そういうものなのだと思っていた。だが二人の旅立ちを目の当たりにして少年は考えた。
『僕達はどこから来て、毎日何をしているのだろう』
思い出そうとした。でも何も思い出せなかった。思い出すという行為すら忘れていた。そういえば家族という言葉があったはずだ。ところで家族とはなんだっけ。会話とは、コミュニケーションとは、僕は誰かと話せるのか。話す?声、そうだ、僕の声は?考えがめぐり、とてつもなく遠い気持ちになって、心臓がぎゅっと掴まれるような苦しみを感じた。
「ゆうと!」
ハッ、とした。少年の頭に直接響いた。聞いたことがある高い声。遠くに聞こえるざわつき。
「ここは、何処だ?」
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