雨の残照

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「あ」  ふと、右にある空き地に目をやるとぼんやりした影が視界に入った。ゆらりと立っているその影は、傘もささずに空を仰いでいた。  彼女は何故かその姿に不思議な印象を受けた。遠目からでも青年だと解る影は、感情を表すことなく雨に打たれ続けている。  声をかけようか、どうしようか。こんな所で雨に打たれているなんて、変な人だったらどうしよう。雨の公園になど自分以外は誰一人として通りかからない。  もし声をかけて襲われでもしたら、きっと逃げられない。  このまま通り過ぎてしまおうか……。しかし、その横顔がとても綺麗で彼女は魅入られたように立ち止まった。  悪い人ではなさそう。だけど、悪い人は大抵そんな言い方をテレビでもされているじゃない。躊躇っていたが、優しそうな眼差しに意を決して歩み寄った。
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