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私は、この時は、まだ安心していた。教職者は、生徒になんて手は出さない、漫画の世界だけで、実際はないと思っていた。だからだろうか、先生方、顧問の田中先生は男性でも毛嫌いをせずに済んでいた。
いつもきちんとした服装、髪もさらさらとして、汗なんかあまり見ない、鬚もちゃんと剃っているし、とにかく見た目がほかの教師よりははるかによく見えた。
雄の顔をしたただの動物だなんて思わなかったんだ。
教室じゃ、それなりに友達はいる、でもうわべだけ、三年間だけ付き合えばいい、そう思いながらみんなの話に合わせる。そう群れの中の一人、紛れ込んでいればいい。
「それで?昨日は大変だったんでしょ」
「もうさ、先輩たちの目の色代わってて、犬っていうより、ハイエナよね」
こわーい、なんてみんなの声、私の周りには女子だけ、それが安心できる。
中学までの私を知っている人はたぶんいない、すんでいるところも変わったし、みんなが行きそうもない学校を選んだ、だから安心できた。隠れるには最適だと思っていたから。
放課後、今日は、昨日のようなことがないから、先輩方もちらほら、昨日のは、ほとんどが幽霊部員だ。幽霊でもいるだけでいいのとアンタラダメだろという部類に分かれる、昨日のは後者。なんで文科系の部活は遊べるなんて籍を置くだけの人を入部させるんだろう。ちゃんと人を見ろよな。真面目な先輩方はこうして毎日来ては、基礎や、科展に出す作品を作り始めているのにさ。
一年の後半の時に、五人いた子たちが辞めた。
いじめじゃないけど耐え切れなかったんだ。私もそうだけど、篠崎先輩がいたから、彼女は私の事をかばってくれた時もあって、それに逃げ場所だったからやめたくなかったんだ。それにまじめな先輩は自分のことしかしないから命令しないしね、彼女達とはいい関係だと思う。
六時、先輩方が帰り始めた。
「それじゃあとお願いね」
「はい、お疲れさまでした」
やったー、これからは自分だけの時間だ
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