0人が本棚に入れています
本棚に追加
雨の日ばかりが、続くこの憂鬱な梅雨の時期に俺は教室にとても大切だったスケッチブックを忘れた。
確か教室の机の中に、置き忘れた記憶がある。
階段を急いで駆け上がり、踊り場付近で俺は1人の名前を知らない少女とすれ違った気がした。
名前も解らないのに、俺はその子を知っている。
何故だか解らないが、とても俺にとって大切な運命の人なのだ。
降りてく少女の顔が見たくて、階段を2段ほど慌てて降りたが、下を覗き込むものの見えなかった。
「誰だったんだろう。」
頭をポリポリしながら、俺は、一気に階段を登り切った。
放課後の教室の扉を開けると、誰も居ない部屋でジメッとした伸びた空気が俺の顔を通り抜ける。
後ろから二番目が、俺の机だった。
丁度机に手を伸ばそうと思った所だった。
ガラッと後ろ側の扉が開いた。
俺は、ドキッとして、開いた扉を見つめた。
「和葉やん。まだ居たんだ。何してんの?」
ケタケタと笑うのは、幼馴染の結菜だった。
最初のコメントを投稿しよう!