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神様になんて、会いたくない!
「さぁ、今日は 歌女神現るのか!?それでは『Kashin's』で『桜になりたい』です」
司会者がそう告げると、拍手と共に、スタジオの照明が落とされた。
イントロと共に淡いピンクのライトが四人を照らす。ダンス、ポーズ、そしてセットの中央からベールを纏った一人の少女が現れる。
人気アイドルグループ『Kashin's』の『衣通 雅』不動の神センターと呼ばれる彼女の歌唱力は他のどのアイドルよりも群を抜いていた。
俊一は昨日放送のあった歌番組をスマホに落とし込み、必死に 瑞希にその魅力をアピールしている。瑞希は興味があるともないとも取れる、ニュートラルな表情でそれを見つめた。
「雅ちゃんの書く歌詞はいつも最高だけど、今回は特にいいんだよ」
『桜になりたい 愛でられ 舞って あなたの元へ 辿り着きたいの♪』
――あなたの元へ辿り着きたいの
瑞希は頭の中でそのフレーズをリフレインしながら、俊一を見つめる。
今後恋愛対象として俊一の心に入り込む余地はあるのだろうかと思いながら。
人の好きなものを安易に否定してはいけないという一心で、瑞希はいつも俊一の『Kashin's話』を聞いていた。それに、話を聞いているうちは、一緒にいられる。
一通り新曲の話を聞いた後、瑞希は家路へとついた。
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