冬を越えて*伍* 人ならざる友

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「も、漏れ……!?」  汀は、凪衣の言葉にひどく動揺を見せた。 「嘘よ。貴方だって、智沙の能力は聞いているでしょう? 時間は掛かっても、この近辺の山林一帯を『視る』のは智沙にとって────」 「勿論、それは承知の上です」  凪衣は汀の言葉を肯定で受け止める。  そして少しだけ口調に力を込めて、但しと付け加えた。 「智沙は当時幼く、『確認』の意図を聞かされてはいなかった。だから母様の指令の言葉をそのまま受け止め、その範囲だけを『視た』のです」 「で、でも、私は智沙に、山林一帯を視てって頼んだのよ。其処に漏れなんて……」  狼狽しながらも疑問を呈する汀。   凪衣は、真剣な表情で一つ頷く。 「はい、僕も直ぐには気付くことができませんでした。しかし、漏れがなければ説明できないことがあるのです」  凪衣は、講義でもしているかのように、さらさらと解説をしていく。 「智沙が、『視た』範囲に『人間』と『人ならざる者』はいなかったと言ったのは何故でしょうか」  講師のように問いを提示すると、彼は誰かの解答を待たず、その正解を口にした。 「この一帯を視たというのであれば、それ自体がおかしいのです。山麓(さんろく)の里で人が暮らしていた時ならばともかく──此処、ニュータウンを『視る』対象に入れていれば、『人間がいない』なんて結果は出ない筈ですから」 「あっ……」  そう驚きを漏らしたのは誰だっただろうか。  この場にいる誰もが頭の中に、凪衣が解説した内容を思い描く。  凪衣は全体を見渡し、結論を口にした。 「そう。智沙は『山林一帯を視て』と指示されて、このニュータウンを除いた山林部を視て、何もいないと結論を出したのです」
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